NEC GREEN ROCKETS
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第4節 1/29(土) vs クボタスピアーズ船橋・東京ベイ マッチレポート

試合情報

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グリーンロケッツ、スピアーズに敗れるも「プラン通り」のトライに手応え!
 

 ――自分たちがやろうとしていたゲームプランは、決して間違ってはいなかった――。
 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦を終えて、NECグリーンロケッツ東葛のメンバーとして初の公式戦出場、つまり「初キャップ」を獲得したSOフレッチャー・スミスは、敗れたにもかかわらず、そんな手応えを感じていた。


 最終的なスコアは26対59と大差をつけられた。トライ数もグリーンロケッツの4に対して、スピアーズは9。3トライ差以上をつけたチームに与えられるボーナスポイントも献上した。けれども、そんな数字がそのまま、これまで着実に積み上げてきたラグビーを否定することにはつながらない――そう考えているのだ。
 手応えの根拠となったのは、LOジェイク・ボールが危険なタックルでイエローカードを受けてシンビンとなり、14人で戦った10分間に、ハーフタイムを挟んで2つのトライを奪ったことだった。どちらのトライも偶発的に生まれたものではなく、ゲームプランに沿って生まれたからだ。
 
 ハーフタイム直前に生まれた最初のトライは、NO,8フェトゥカモカモ・ダグラスが自陣でジャッカルを決めて相手のペナルティを誘い、ピンチを脱出した直後に生まれた。


 CTBティム・ベネットをFLの位置に入れたスクラムで、なんとかボールを確保。そこからボールを左へ、左へと運んでラックを作り、今度は右へ折り返す。SH田中史朗からパスを受けたとき、スミスには、スピアーズの防御ラインにできたわずかな隙間が見えた。そんなギャップを見逃さずに、スラロームのようにタックラーを抜き去り、右サイドで待っていたダグラスにボールを託す。
 ダグラスは右側のタッチラインに出ないよう意識して直進。防御を引きつけて内側をサポートしたPR瀧澤直キャプテンにリターンパス。キャプテンもまた直進してチャンスを広げる。
 そして、最後はダグラスがタックルを受けながらもオフロードパスをHOアッシュ・ディクソンに通して、トライに仕上げた。
 
「あれはダグラスがお膳立てしてくれた“美味しい”トライでした」と笑ったのはディクソンだが、スミスにとっては、スピアーズの防御ラインの裏に出ればチャンスが広がるという事前の分析に、確信を抱いたトライだった。
 
「確かに前半はボールを動かして、相手の大きなFWを走らせるというプラン通りのプレーができず、フラストレーションが溜まる展開が続いた。でも、そのなかでも、みんなでプランを変えることなく、もっと精度を上げてボールを動かそうと話し合っていた。それが、前半の終わりのトライや、後半のトライに結びついたのだと思う」
 そうスミスは振り返ったが、後半立ち上がりにCTBレメキ・ロマノ・ラヴァが挙げたトライも、同様に、ボールを大きく動かしてのトライだった。
 
 こちらは、スミスのピンチ脱出のキックが、スピアーズの選手の足に当たって跳ね返ったところをベネットが確保。それでも、スミスがパスを受けたとき、外側にいたのは瀧澤とレメキの2人だけ。一見すると、自陣で依然としてピンチが続いているようだが、スミスは、遠くの右端でレメキがスピアーズHOマルコム・マークスと1対1になっていることを確認していた。
 だから、遠いスペースで手を挙げてパスを要求したキャプテンのリクエストに応えて、長いパスを放った。パスを受けた瀧澤が少し前進して防御を引きつけてレメキにパスを託すと、果たしてレメキとマークスが1対1に。レメキはそのままマークスをスピードで振り切って独走。最後は右手を突き上げて、インゴールにダイブした。
 
 スミスが言う。
「ディクソンのトライの前に僕が走ったとき、スピアーズ防御の出足は早かったけれども、裏に抜ければ大きなスペースがあることがわかっていた。そこを突いたことで、チャンスを作り出せた。レメキのトライは、パスを送る前に見たら、彼の前にいたのがHOだったから、レメキなら走り切ってくれると信じていた。ただ、ボールを呼び込んだ瀧澤との間にはものすごく距離があって、一瞬、僕のパスが届くか、ちょっと不安になったけどね(笑)」
 この試合に向けたゲームプランを、もう少し違う角度で説明してくれたのが、66分に自陣ゴール前でパスをインターセプトして、一気に90メートルを走り切ったFB児玉健太郎だ。
「スピアーズのFWは大きいので、キックを上手く使いながら相手を走らせて、グリーンロケッツFWの機動力を生かすのがゲームプランでした。つまり、相手の陣形を崩すためにキックを有効に使い、組織的なディフェンスが機能しなくなるアンストラクチャーな状況を作り出そうとしたのです」
 児玉が、得意のランだけではなく、キックを多用したのには、そういう背景がある。
 

 ロバート・テイラーHC(ヘッドコーチ)が、さらに補足する。
「スピアーズのように、大きな選手たちが防御で素早く圧力をかけてくるチームには、ボールを長くキープして戦うのは非常に難しい。だから、もっとアンストラクチャーな状況を多く作り出して、防御を混乱させたかった。そのために、セットプレーやディフェンスで圧力をかけようとしたのですが、そこがプラン通りには進まなかった。それは今後の修正点です。でも、トライが生まれた場面は、そうした状況を作り出していた。苦しいゲーム展開だったにもかかわらず、グリーンロケッツのラグビーがどういうものであるか、最後まで諦めずにキャラクター(個性)をしっかり出してくれた選手たちを誇りに思います」
 
 瀧澤キャプテンも、「インターセプトからのトライは別にしても、今日は練習してきたことが出たトライを獲れた」と、手応えを口にする。
 その上で、「でも、相手にトライを獲られ過ぎましたね」と反省して、敗因をこう振り返った。
「今日は、自分たちが準備したオプションを使うべき場面で、ラインアウトのミスなどで使えずに終わった場面がいくつかありました。アタックの精度を考えれば、準備したオプションをもっと出せるようにすることが大切です。それはディフェンスでも同様で、自分たちが用意したプランや想定と少し違ったところがあった。敗因をたどれば、そういう精度に行き着くと思います。ただ、そのなかでも、次の試合につながる手応えはありました」
 
 その「次の試合」は、6日にホストスタジアムとなる柏の葉公園総合競技場で行われるコベルコ神戸スティーラーズ戦。約1ヶ月ぶりのホストゲームだ。
 この試合に並々ならぬ決意を燃やしているのが、今季スティーラーズから移籍してきた児玉。胸の内を、こんな言葉で明かしてくれた。
「まずはゲームプランをしっかり自分のなかに落とし込んで、それを遂行できるようにしたい。それが一番ですが、相手が神戸ということで気持ち的に燃える。ラグビーは気持ちで展開が変わるスポーツなので、1つひとつのタックル、ボールキャリーに気持ちを込めたい。僕自身、いいエネルギーを持って戦えると思っています。」
 「気持ち」がピッチで好プレーとなって現れれば、クルーが送る気持ちもさらに熱量を増す。
 瀧澤キャプテンも、そんな「好循環」を期待する。
「僕たちがやることはゲームプランを信じて、自信を持ってしっかり遂行することです。ただ、ホストゲームなので、そこからさらにクルーのみなさんのサポートに乗って、自分たちの至らないところをカバーできるかもしれない。僕たちも、それに乗っかって、さらにみなさんに喜んでいただけるようなプレーをする。そういう良い循環が起こるのが、ホストゲームというものだと思います」
 節分を過ぎて暦の上では春となる6日、グリーンロケッツも春を告げる白星を挙げられるか。
 注目のキックオフは14時30分だ。


スターティングメンバーなどはこちらよりご覧ください。

リーダーズコメント


ロバート・テイラーHC

大きなFWを持つ強い相手に対して、選手たちはそれぞれの個性を生かしてよく戦った。それを誇りに思います。
新しいチームを軌道に乗せるにはある程度、時間がかかります。ただ、苦しみながらも、選手たちが強い個性を出して80分間、屈することなく戦い続けたのは良い兆候でしょう。もちろん、セットプレーを中心に、まだまだ修正すべき部分は多いのですが、それでも80分間、屈することなく戦う気持ちをチームとして忘れずに、自分たちの持ち味を出せた。これが、ラグビーにおいて、もっとも大切なことなのです。
来週のコベルコ神戸スティーラーズ戦に向けては、とにかく1週間でしっかりした準備をします。特にディフェンスとセットプレーの修正が、もっとも大切になります。その上で、今日のように決して諦めない姿勢で、自分たちの持ち味をフルに出せば、チャンスはあると考えています。私たちも、またホストで試合ができることを楽しみにしています。
 
 
瀧澤直キャプテン

僕たちが獲ったトライは、インターセプトを除けば、練習してきたことが出たトライだったと思います。ただ、今日は、トライを獲られ過ぎました。反省点としては、特にペナルティが多くなったことが挙げられます。今日は、自分たちで意識すれば減らせるペナルティも多かったので。だから、修正するためには、相手がどうのこうのではなく、まず自分たちにフォーカスすることが重要だと思っています。
来週のホストゲームに向けても、僕たちがやることは、コーチから与えられたプランを信じて、自信を持って、しっかりと遂行することに尽きます。これはホストゲームの試合に限ったことではありませんが、そうすることで、勝利を呼び寄せられると思います。
あとは、みなさんのサポートに乗っかって、今度は僕たちがみなさんを喜ばせられるような良い循環に持って行きたい。それがホストゲームというものだと思いますから。僕たちも、そのためにいい準備を重ねて試合に臨みます。

(取材・文:永田洋光)