NEC GREEN ROCKETS
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第11節 3/12(日) vs 東芝ブレイブルーパス東京 マッチレポート

試合情報

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“グッドデビュー”を果たした若武者。
堂々とした姿は大きな可能性を感じさせた



NECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)はホストゲームで東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)と対戦。後半開始直後に、一時は20-18と逆転したが、その後はBL東京の攻勢に4つのトライを許し最終的には20-49で敗れた。絞
現在5位とプレーオフ進出を争う強豪・BL東京相手に悔しい敗戦となったGR東葛だが、吉村 紘のデビュー戦は将来へ向けての飛躍を大いに期待できる内容だった。
背番号10を着け、フィールドに登場した若武者は、そのファーストプレーから魅せた。
自陣でのスクラム。スクラムハーフの田中史朗が出したボールを22mライン付近で受けると、前方をいちべつした吉村は右足でロングキック。ボールは相手陣深いところでバウンドするとゴールライン手前まで絶妙なバウンドで転がる。一気に陣地を獲得したこのプレーが、序盤のGR東葛の攻勢を呼んだことは間違いなかった。
「この試合を迎えるにあたって、できるだけ多く周りの選手とコミュニケーションを取って準備してきたので気負うことなくプレーできた。試合開始から『強気でプレーしよう』と心がけていたのでああいったプレーができたと思います」
前半19分には自ら50:22のタッチキックを見事に決めて陣地を回復し、その後のマイボールラインアウトからGR東葛が左に展開するプレーの中で相手ディフェンスの意表を突くアウトサイドキックでトライチャンスを演出。このプレーの流れからGR東葛は、吉村自身のリーグワン初得点となるペナルティゴールへと結びつけた。
さらにGR東葛のファンが大いに沸いたのは後半開始直後のプレー。自陣深くからクリスチャン ラウイがゲインラインを突破すると一気にインゴールまで突っ走ってトライ。その後のコンバージョンでは吉村が輝く才能にあふれていることをファンに披露する。
右タッチライン沿いからの距離のあるコンバージョンキック、吉村が右足を一閃するとボールは逆風を切り裂くように飛んでゴールポストのほぼ真ん中を通過し、スタンドからどよめきが起こる。このコンバージョンゴールでGR東葛は20-18と試合をひっくり返すことに成功。大型新人の堂々たるプレーぶりにファンは割れんばかりの拍手を送った。


この日スクラムハーフとしてコンビを組んだベテランの田中も試合後、吉村のプレーぶりについて「(ロバート・テイラー)ヘッドコーチからは『一緒にチームを引っ張ってくれ』と言われましたが、彼自信がもうゲームを理解してチームをけん引してくれた」と高く評価。「周りの選手としっかりコミュニケーションを取れる選手なので、自分も思っていることをお互いに言い合いながらプレーできた。これからの彼の成長についても、すごく楽しみです」。
前半9分にBL東京にレッドカードによる退場者が出て70分間以上を一人多い状態で戦えたGR東葛は、逆転したあと、BL東京の反撃に力負けし4トライを奪われ残念な敗戦となった。
しかし、早稲田大学で大学選手権決勝を戦った翌日にアーリーエントリーでチームに加わった頼もしい若武者の登場には、デビュー戦を見守ったGR東葛のファンも大いなる未来への希望を抱けたに違いない。堂々たる吉村の“グッドデビュー”だった。
(関谷智紀)

スターティングメンバーなどはこちらよりご覧ください。
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リーダーたちが見たピッチの景色

SO吉村紘、才能の片鱗見せてGR東葛デビューを果たす!
~アーリーエントリーの若手を始め、今季初登場の選手たちが見たピッチの光景~
 
ホストスタジアムの柏の葉公園総合競技場で、グリーンロケッツ東葛の若手が3人、嬉しい初キャップを獲得した。
先発して10番を背負った吉村紘と、試合終盤にNo8フェトゥカモカモ・ダグラスから代わったヴィリアミ・ルトゥア ・アホフォノは、まだ大学4年生であるにもかかわらず、リーグワンが定めた「アーリーエントリー」(入団が内定した最終学年の大学生に、大学選手権終了後からリーグワンでのプレーを認める制度)によって初キャップ獲得。吉村は早稲田大学の、アホフォノは摂南大学の、卒業をそれぞれ控えている。
PR山本耕生は、法政大学から昨春入団したルーキーで、久保優に代わって後半の58分からピッチに立った。
とはいえ、デビュー戦は、東芝ブレイブルーパス東京に、一時は20対18と逆転したものの、終盤にトライを重ねられて20対49と、いささかほろ苦いものとなった。
果たして彼らの目には、リーグワンのピッチがどのような光景として映ったのか――。
 

「緊張はしなかったです」と言ってのけたのは吉村だ。
デビュー戦がリーグワンの公式戦であったにもかかわらず、そう話すのは、大学選手権や関東大学対抗戦の大舞台を何度も経験しているから。しかし、自身のパフォーマンスについては一転して、「自己評価的にもいいとは言えない」と、厳しく振り返った。
こう言うのだ。
「試合が終わったばかりで、まだあまり冷静にレビューできないのですが……。そのくらい無我夢中でやっていました。余裕もなかった。でも、最初のPGを外したり(5分)、せっかくFWがペナルティをとってくれたのにタッチキックがノータッチになってしまったり(61分)……というところが自分の甘さ。成長するしかないですね」
それでも、最初のPG失敗を除けば、2本のPGと2つのコンバージョンをすべて決め、10点を蹴り出した。
後半開始直後には、ラインアウトのターンオーバーからのアタックで、SH田中史朗からパスを受けるや、ほんの少しだけ長くボールを持ち、ブレイブルーパス防御を前に引き出して、CTBクリスチャン・ラウイの50メートルを超える独走トライをアシストした。
ロバート・テイラーHC(ヘッドコーチ)も、「素晴らしいパフォーマンス。若い選手なのに、成熟したところも見せてくれた。スペースを見つける目など、ラグビーをよく知っている印象で、とても満足しています」と、高く評価する。もちろん、「今夜は、彼にとっても眠れない夜になるでしょう。キックのミスなどについては、改めて彼とレビューします」と付け加えることも忘れなかったが。
 

SH田中史朗も、やはりこう評価する。
「今日は、吉村選手としっかりコミュニケーションをとることと、相手陣にまず入ることを意識して試合に臨みました。でも、何回かコミュニケーションミスで自陣から回してしまったことがあった。そういう部分は僕がもっと引っ張らないといけないと思いましたが、前半の途中から良くなってきた。(吉村は)いい声を出してくれたから、すごくやりやすかった。ここにスペースがあると思って放れば、彼がそのスペースにしっかりボールを運んでくれましたね」
自陣でボールを回したことでトライを奪われたのは22分。吉村が最初のPGを決めた直後のリスタートの場面だ。しかし、その後はハーフ団で落ち着きを取り戻し、いい流れを作り出して、後半立ち上がりのラウイのトライにつなげている。
その辺りを、吉村本人はこう振り返った。
「(ラウイのトライは)相手のディフェンスを見て、少しパスのタイミングをずらしたプレーでした。僕が最初から決めていたリズムでプレーをしたら、たぶん、インターセプトされる可能性もあったと思います。そういう、自分のイメージで決めたプレーをしているときに、相手のディフェンスを見てプレーを変えられるところが、自分強みかなと思います」
続けて、こう胸を張った。
「スペースを見る感覚が強みだからSOをやっていますし、自分のスキルはチームのために活かせる長所だと思っています」
果たして吉村は、シーズン終盤に10位、11位、12位の“ボトムスリー”からチームを脱出させるためのエンジンとなれるのか。
「チームが勝つために、自分にできることをやりたい。もちろん、メンバーとして貢献したいのですが、練習のときの雰囲気作りや、常に勝つことを意識して練習することにも貢献していきたい。そのための、チームの1つのパーツになれればいいかなと思います」
それが、シーズン終盤に向けての、吉村の抱負である。
 
対照的に「すごく悔しい」と言いながらロッカーに引き上げてきたのが山本だった。
「試合で初めての相手と組むスクラムは、映像で見てはいても、どういうスクラムを組んでくるのか組むまでわからないところがありました。そういうときに対応していく力が必要だと感じました。スクラムでは、自分の課題が多いので1つひとつクリアしていきたい。クリアできれば、もっと成長できると思います」
対戦相手のスクラムを映像では確認していたが、実際に組んだスクラムは、やはり映像とは異なり、その違いに戸惑ったというのだ。
それでも、「毎日アピールして試合メンバーに絡んでいきたい。自分を前面に出してアピールしていきたいと思います」と、前向きに抱負を語ってくれた。
もう1人の初キャッパー、アホフォノは「ワクワクしていた」とリーグワンデビューを心待ちにしていた。
出場時間は3分ちょっとと短かったが、こう話す
「今日デビューできてハッピーだった。本当に興奮したし、自分のベストを尽くそうとした。今日は、自分ができるという手応えをつかむことができました」
こちらも、可能性を秘めた大器だ。
 

そして、彼らの他にもこの試合では3人が「初」を記録した。
FL大澤蓮は初先発。WTB宮島裕之と、終盤に宮島と代わった小幡将己は今季初出場だ。
大澤は、5分過ぎに、吉村のPG失敗後のドロップアウトのボールを捕球するや直進。チームを前に出して、そのラックから宮島へとボールがつながった。
宮島がラックに持ち込んだところで、FBレメキロマノラヴァがボールを持ち出して独走。トライまであと5メートルと迫るチャンスの起点になった。
大澤が言う。
「僕は先発の方が気が楽です(笑)。先発だと、試合は0対0から始まるので、スコアを気にしないで思い切ってプレーできますから」
心がけているのはチームに「勢いを出す」プレー。だから、これが大澤のなかでは一番「自分らしさ」が出た場面だった。
「あれはもう何も考えずに思い切り走りました。それほどゲインはできなかったのですが、自分らしいプレーができた。勢いの良さが僕の持ち味なのです」
23分にも、大澤はリスタートのキックオフを追走。宮島とともにブレイブルーパスNo8リーチ マイケルにタックルを見舞い、ノックオンを誘っている。そして、このスクラムからのアタックが、吉村の2本目のPGにつながった。
ゲームのなかでチームから求められる役割を全うしつつ、チャンスには思い切りの良さで大胆に相手にチャレンジする――そんな大澤の持ち味は、試合のなかで随所に見られた。
 

実は、この2本目のPGに至る過程で、宮島にトライチャンスが訪れていた。
吉村が、自陣からキックを蹴って相手陣22メートルラインの外にボールが転がり、50:22ルールでグリーンロケッツ東葛がマイボールのラインアウトを獲得。ここから左に展開し、吉村が右足のアウトサイドでスペースにボールを蹴る。
それを捕ったのが宮島だった。
ところが――捕球して走り出そうとしたところでバランスを崩して、目の前のゴールラインを越えられなかった。
宮島が「もったいなかった……」と振り返った場面だ。
さらに後半には、7つフェイズを重ねてチャンスをつかみ、タッチライン際でパスを受けた宮島が前方のスペースにボールを転がした。タイミングのいいキックだったが、ボールが少し転がり過ぎてタッチインゴールを割り、蹴った地点に戻されて相手ボールのスクラムとなる。そして、ここでペナルティを犯したことがきっかけとなってブレイブルーパスに攻め込まれ、58分にトライを献上している。
不運としか言いようがない結末だったが、それでも宮島は前を向く。
「僕にできることはハードワーク。その部分では、誰よりも努力して、誰よりも走る。あとは、コール。的確な声を出してアタックでは前に出られるように、ディフェンスでは相手を止められるように、やっていきたい。それが僕の仕事なので。それに加えて、WTBやFBで試合に出る以上は得点をとることが求められる。それはしっかりやっていきたいと思います」
そんな宮島から代わった小幡も、アピールするにはあまりにも短いプレー時間だったが、やはりこう言って前を向く。
「(試合に出られないことで)やる気をなくすのは簡単ですが、それではチームの士気が下がるし、自分自身も成長できない。だから、自分のためにも精一杯やる。アピールするためには、練習からしっかりやらないとダメだと思うので、これからまた頑張ります!」

 
希望の芽と、一度は逆転したゲームを再逆転されて露呈した課題。
次節に控えるコベルコ神戸スティーラーズとの大切な一戦(19日 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 14時30分キックオフ)に向けて、テイラーHCは、こう総括する。
「まず、最重要課題はディフェンス。今日の試合を振り返って課題を洗い出す必要がある。相手に49点も与えては勝つことが難しくなります。それから、規律。今日もダグラスがイエローカードをもらいましたが、その10分間で3トライを奪われている。カードをもらうと、それだけでチームは(数的不利という)大きなプレッシャーを受けることになる。次節はスティーラーズも必死に勝ちにくるでしょう。勝利に飢えた両チームが正面から激突するのです。きっと激しいゲームになるでしょう。だから、今日はチームの戦力に厚みを加えるために若手にチャンスを与えましたが、次節は、今日の試合をレビューしてベストのメンバーで臨みます!」
ボトムスリー脱出をかけた、カンファレンスBでの2巡目の総当たり戦へ――。
グリーンロケッツ東葛は、エンジンを全開にして上昇を目指す!

(取材・文:永田洋光)

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