「次節以降もチームにモーメンタム(勢い)が出る戦いをしたい!」
~リーダーたちが語る、11位以下が確定したGR東葛に今、必要な戦い方とは?~
前半23分に横浜キヤノンイーグルスに3トライ目を奪われ、スコアが0対21となったときは、柏の葉公園総合競技場に陣取るクルーも、少し意気消沈したように見えた。
試合のおよそ4分の1にあたる20分間、NECグリーンロケッツ東葛はイーグルス陣内に攻め込むことがほとんどなく、たまに歓声と張り扇の音が盛り上がる場面はあっても、直後にグリーンロケッツ東葛がペナルティやミスを犯してふたたび場内が静かになる――そんな場面が続いていた。
「前半はペナルティが非常に多く、イーグルスにチャンスを簡単に与える結果になっていました」と、ロバート・テイラーHC(ヘッドコーチ)。
しかし、26分過ぎに、この試合で初めてスクラムでイーグルスからペナルティを取ると、続くラインアウトからのアタックでイーグルスの反則を誘い、28分には、イーグルス陣内22メートルラインを越えた地点でマイボールラインアウトを得た。ここからのアタックはトライに結びつかなかったが、ようやくクルーが歓声をあげる場面が訪れたのだ。
そして、21点差のままゲームが推移した前半のラストプレー。
WTB児玉健太郎が狙い澄ましたタックルでイーグルスのペナルティを誘って、ゴール前でのラインアウト勝負に持ち込む。
投入されたボールはすっぽ抜けたが、CTBマリティノ・ネマニが身体を張って確保。そこからフェイズを重ね、最後はFLカヴァイア・タギヴェタウアが身体をねじ込むようにトライを決めて、クルーの気分も高揚したままハーフタイムに突入した。
5対21と点差は開いているが、少しずつグリーンロケッツ東葛に、流れが傾いているように感じられたのだ。
ハーフタイムにテイラーHCが発したメッセージは「後半はボールを大切にしよう」だった。
前半に、ペナルティやミスでイーグルスにチャンスを与え、それがトライを与えることにつながった反省を踏まえてのコメントだ。
ところが――。
後半立ち上がりに、相手キックを確保してテンポ良くアタックしたところでパスをインターセプトされてトライを奪われ、いきなり出鼻をくじかれる。
嫌な予感のするリスタートだったが、そこからグリーンロケッツ東葛は踏ん張った。
48分には、ゴールラインを背負った大ピンチを粘り強く守り、児玉が相手パスをインターセプト。ペナルティを得てハーフウェイライン付近でのラインアウトにして、そこから反撃を開始する。
LOジェイク・ボールの突進を皮切りに5フェイズを重ね、SO前田土芽が前に鋭く飛び出したイーグルス防御をパスダミーでかわして突破。右にサポートしたキャプテンのFBレメキ ロマノラヴァにパスを通してトライに仕上げた。
前田がコンバージョンを決めて12対28。
クルーの張り扇に元気が戻る。
55分にはイーグルスにトライを許したが、59分にはトライ後のリスタートかから10フェイズ粘り強くボールを継続し、最後は途中出場のWTBタンゲレ・ナイヤラボロが、巨体を揺すってノーホイッスルトライを締めくくり、クルーのハリセンは最高潮に達した。
さらに73分には、ラインアウトのモールから左へ展開し、ナイヤラボロが2つ目のトライ――と、グリーンロケッツ東葛のいい時間帯が続いたが、ここでTMOの結果、トライに至る前にノックオンがあったと判定されてトライは取り消しに。
それで意気消沈したのか、そこからイーグルスに連続トライを奪われて、最終的には17対45で敗れた。これでグリーンロケッツ東葛は今季の11位以下が確定。ディビジョン2との入替戦に回ることが決まった。
テイラーHCは、こう試合を総括する。
「前半の最後にタギヴェタウアがトライを獲った場面や、後半にナイヤラボロがトライを獲った場面は、攻めるなかで相手の圧力に負けずにボールを継続することができた。ディフェンスでも、しっかり守ってターンオーバーできた場面がありました。ただ、その他の場面では相手の圧力に負けることが多く、場面場面では良いところもあったのですが、80分間を通して相手にプレッシャーをかけることができなかった。次節以降、入替戦に向けて、いかに自分たちのプレーを一貫してやり通せるかがカギになるでしょう」
ディフェンスを担当する松尾健 、権丈太郎の両コーチは、イーグルス戦でできたことを、シーズン終盤に積み上げることの大切さを強調して、こう話す。
「今日は、前に出てプラン通りのディフェンスができたときはイーグルスをしっかり止められた。やろうとしているディフェンスができた部分は確実にありました。アタックも、自分たちの形に持ち込んだときはトライが獲れたので、そこは自信を持った方がいい。そういう部分では成果が出たと思います」
そう松尾コーチが話せば、権丈コーチもこう続ける。
「自分たちがしっかりタックルできれば、リーグでトライ数が2番目に多いイーグルスも止められる。ターンオーバーもできる。後半途中まで、トライを獲られたのは、モールからが3つと、インターセプト。フェイズを重ねられて組織防御を完全に崩されたわけではない。そういう意味では、反省すべきポイントがわかりやすい試合でした」
そして、こう言うのだ。
「あとは、選手たちがどれだけタックルしたいか、という気持ちの問題。タックルできたときはしっかり止められたので、そういう気持ちをもっと強く持てば、良くなる要素がある。僕は、そう前向きにとらえています」
同じことを、元キャプテンのFL亀井亮依は違う言い方でこう表現する。
「いい結果を2回、3回と積み重ねることができないのが僕たちの課題。ふっとスイッチが切れたような場面でトライを獲られたり、ちょっとしたミスでトライを獲られている。これまでもそうだったけど、そこが、僕たちが成長しないといけない部分ですね」
実は、この「積み重ねる」という言葉に、これからのグリーンロケッツ東葛の未来がかかっている。
コーチ陣が語るのも、それぞれ言葉は違えど、自分たちがこれまで積み上げてきたラグビーを、どこまで一貫して遂行できるか――つまり「できたかできないか」ではなく、「できたこと」を「積み重ねて」試合を通してやり続けることの大切さなのである。
そして、それがチームの未来につながることにつながる。
レメキは、こう言うのだ。
「来季もディビジョン1で戦い続けることが、チームにとってはもっとも大切なこと。だから、これからは、入替戦に向けて良いモーメンタム(勢い)を作ることが大事になる。そのためにも、次節のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦(16日 柏の葉公園総合競技場 14時30分キックオフ)、最終節の花園近鉄ライナーズ戦(22日 東大阪市花園ラグビー場 14時)としっかり戦って、万全な状態で入替戦に臨めるようにしたい。とにかくチームに勢いをつけないとね」
そう。
今季だけではなく、グリーンロケッツ東葛が見据える「未来」のためにも、どこまでチームに勢いをつけられるか――それが、今季最後のホストゲームとなる次節の、最大の見所なのである。
(取材・文:永田洋光)
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