リーグワン初のボーナスポイント付き勝利でレギュラーシーズンを終える!
~ライナーズ戦でつかんだ、ディビジョン1残留への大きな手応えとは?~
東大阪市花園ラグビー場のスタンド下にあるロッカールームには、「我らグリーンロケッツ」と繰り返す歌声が響き渡っていた。
勝利の凱歌だ。
NECグリーンロケッツ東葛は、3勝13敗勝ち点14と苦しいシーズンを過ごしたが、締めくくりは、相手に3トライ差をつけてボーナスポイント付きの勝利。しかも、一度は逆転を許しながらの再逆転で、順位を昨季よりも1つ上げて11位でレギュラーシーズンを終えた。
ロッカーから出てきたロバート・テイラーHC(ヘッドコーチ)も、頬をピンク色に上気させながら、一気に喜びを語った。
「第9節に三菱重工相模原ダイナボア―ズに勝ってから6連敗という苦しい状況だったにもかかわらず――そして今日の試合も、先制しながら逆転される苦しい展開だったにもかかわらず――しっかりとボーナスポイントをとって勝ち切った。選手たちを、とても誇りに思います!」
キャプテンのレメキ ロマノラヴァも、興奮した表情で「今日は、ボールをキープすれば絶対にトライを獲れると思っていた」と話して、こう続けた。
「昨季は、不戦勝以外は勝てなかったけど、今季は3勝できた。(第8節の)トヨタヴェルブリッツ戦も、もう少しで勝てた試合だった(18対21)。来季は5試合以上勝って、どんどんチームの魅力をアピールしたい。それが、将来的にいい選手を獲得することにもつながるからね」
レギュラーシーズン終了後に、三重ホンダヒートとの入替戦(第1戦=5月5日 三重交通G スポーツの杜 鈴鹿 サッカー・ラグビー場 12時キックオフ)が待つ状況は昨季と同じだが、最下位で入替戦に臨んだ昨季とは、チームのムードも手応えも大きく違うのだ。
前節の試合後に「ライナーズ戦を勝って、入替戦に勢いをつけたい」と話していたキャプテンが、意図した通りの勝利だった。
ライナーズ戦を振り返れば、前半を強い風下で戦いながら22対14とリードして終えたグリーンロケッツ東葛は、風上に立った後半に思わぬ苦戦を強いられ、開始から17分で2トライを奪われて22対26と逆転された。風上の優位性を活かせずに、窮地に立たされたのだ。
しかし――。
そんな流れを変えたのが、逆転を許した直後のリスタートだった。
60分。
レメキが高く蹴り上げたボールを、WTB後藤輝也がしっかりと追走。ライナーズの落球を誘い、こぼれたボールを途中出場のFL大澤蓮が拾って鋭く前に出る。大澤が倒されてラックができたときには、右側にしっかりとアタックラインができていた。
SHニック・フィップスが放ったパスを最初に受けたのは、こちらも途中出場のPR瀧澤直。そして、瀧澤からSO金井大雪→レメキ→後藤→CTBマリティノ・ネマニときれいにパスが通って、最後はWTB尾又寛汰がノーホイッスルでトライを決めた。
金井が右端からの難しいコンバージョンを決めて、26対22。
レメキのキックから、所要時間が1分にも満たない見事な速攻での再逆転劇だった。
「後藤はキックを捕るのが上手いから、絶対に捕ってくれる。今週は、キックオフのときに彼を左に入れて全部チェイスするように練習していた。あのキックオフも、練習通りだよ」
これが、キックオフを蹴ったレメキの証言。
後藤も、「今日は風が強く、(キックオフでは)思っていた以上にボールの軌道が読めなくて、キャッチするのが難しかった。でも、その分、相手も難しいので、とにかくボールの近くに寄って、ボールにコミットしようと思っていました。たとえ僕がそこでノックオンをしても、相手陣深いところでのスクラムからゲームが再開する。だから、どんどんチャレンジしていこうと積極的に競りに行きました」と、追走が狙い通りの効果を生んだことに満足げだった。
後藤は、このキックオフチェイス以外にも、快足を飛ばして前半最初の2トライをアシスト。後半のピンチの場面では、相手のパスに頭から飛び込んでボールをインターセプトするスーパープレーを見せた。72分には、相手のパスミスを拾って40メートル独走のトライも挙げて、見事にプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選ばれた。
16年のリオデジャネイロ五輪・男子7人制ラグビーでは、レメキとともに日本代表として全試合に出場。優勝候補だったニュージーランド代表を破るなど4位入賞と躍進の原動力になった。
しかし、今季の出場はこの試合も含めて8にとどまった。
後藤が言う。
「入替戦が終わるまで絶対に負けられない試合が続く。僕も『今日は絶対やるぞ!』という気持ちで試合に臨みました。今季は、最初の頃は試合に出ないことも多かったけど、出る以上は全力でやろうといつも考えていました。とにかく結果を残していかないと次の試合に出ることが難しいとわかっていましたから。その点では、今日は納得のいくプレーができましたが、細かいところでコミュニケーションのミスがあったり、まだまだの部分もありました。だから、そういう部分を詰めていきながら、(入替戦では)今日の良いところをもっと出せるように頑張ります!」
“オリンピアン仲間”であるレメキも、後藤の能力を高く評価する。
「後藤は、ボールを持つチャンスを作ってあげれば、絶対に何かをしてくれる。ディフェンスも本当にレベルが高いんだ」
勝利が絶対条件の入替戦に向けて、快足フィニッシャーが調子を上げてきた――これも、5ポイントの勝利と同様に「勢いをつける」ための好材料だ。
さて、入替戦の初戦が5月5日に行われるのは前述の通りだが、今季最終戦となる第2戦は13日にホストゲームとして柏の葉公園総合競技場で行われる(12時キックオフ)。
これまで温かくチームを支えてくれたクルーに地元で最高の勝利を届け、来季も日本最高峰の舞台で戦うことを確約するのが、今はグリーンロケッツ東葛全員の思い。
チームを代表して、テイラーHCがメッセージを寄せる。
「クルーのみなさまには、いつも応援していただいて感謝しています。今日も、大阪まで駆けつけてくれたクルーの姿に感動しました。そんなみなさまに、今日は勝利をプレゼントすることができて本当に良かった。この勝利でさらにモチベーションが高まったので、メンタル面でも良い状態で入替戦に臨めます。入替戦の最終戦はホスト柏の葉でのゲームです。だから、そこでみなさまにしっかりと勝利をプレゼントしてシーズンを締めくくりたい。そのためにも、スタジアムを緑に染めてくれるようお願いします!」
高いレベルで16試合を戦い抜いた末に、さらに連戦が待つ状況は楽観を許さないが、キャプテンのレメキもこう決意を表明する。
「クルーのみなさん、今まで応援ありがとうございました! これからも厳しい戦いになるとは思うけど、入替戦をしっかり勝って、来季もディビジョン1で今年より良い成績を残せるように頑張ります!」
リーグワン2シーズン目にして初めて獲得した5ポイント勝利の余勢を駆って、グリーンロケッツ東葛は、来季へ希望をつなぐための最後の2試合に挑む。
プレーヤーズコメント
SO金井大雪
「(前半に3本続けてコンバージョンを外したときは)ちょっとやらかしたな……と思いましたけど、切り替えるしかないと思って頑張りました。前半の最後に1本決めることができて、あれで落ち着いた。やっぱり、1本決まると気持ちが違うので。
今日の前半は、風下にもかかわらず、あまりペナルティをしないで守れたのが良かった。後半の立ち上がりに連続トライを獲られた時間帯は、反則を繰り返して自陣に攻め込まれることになったので、入替戦ではチームとして規律の部分が大事になってくると思います。
アタックでは、けっこうスペースが空いているのが見えたし、ボールを持てば、こちらにもいいランナーがたくさんいるので、外側でチャンスを作れるだろうと試合前から考えていました。その点は、イメージ通りにボールを動かせたと思います。
入替戦は2試合あるので、一貫性を持った戦い方をしたい。
まずは1試合目で、ディビジョン1のチームは違うと思わせるような展開に持ち込みたい。その意味でも、第1戦が非常に大切だと思います。自分の課題で言えば、ゴールキックもそうですが、もう少し上手くゲームをコントロールして早くリードを広げ、楽な展開に持ち込みたい。その部分で、プレーの精度を高めたいですね。
そして、最後はホストゲームでも勝って、いい形でシーズンを終わりたいと思います」
FL亀井亮依
「今日は、途中で『ちょっとマズいな』という雰囲気になりかけましたけど、風下の前半をリードして終えられたし、後半は風上なのでエリアを確実にとっていけば絶対に行けると思っていました。
入替戦に向けては、今日も、相手に1回のアタックでトライを獲られてしまったので、チームとしてどれだけ規律を保ちながら守れるかがカギになるでしょうね」
(取材・文:永田洋光)
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