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【選手インタビュー#01】土井貴弘 ~無心で前だけを見てきた男~

コラム・記事

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GREEN ROCKETS
HERO'S TRAJECTORY #01


多くを語らない、土井 貴弘という男。

同期入社で2021年に現役を引退した廣澤 拓がインタビュアーとなり、在籍14年の思いを紐解いていく。
奈良県立御所工業高等学校(現 御所実業高等学校)でラグビーと出会い、明治大学へ進学、そしてNEC入社年の2009年に日本選手権ベスト4、2012年にはリーグ4位を経たが、3年間リーグで勝てない時期も経験、昨シーズンようやくリーグワンでの初勝利を手にするも、ディビジョン2に降格。様々な経験をしてきた土井は今、何を思うのか。

入団時を振り返り

廣澤:NECに入団したきっかけを教えてください。

土井:それしか選択肢がなかったから・・・笑

廣澤:嘘つかないでください笑

土井:いや、NECが強いというイメージしかなかったから、強いチームでやるという意味では、NECしか選択肢が考えられなかった。
あんまり高校・大学の時はラグビーを見ていなくて、携帯もガラケーだし、見る媒体も少なかったけど、毎年ラグビーシーズンになってきたら、NECが優勝したってニュースがめっちゃ流れてて、そんな時にNECから声をかけてもらって、その環境でラグビーをしてみたいと思って決めた。

廣澤:優勝している強いチームへの入団が決まったときの思いは?

土井:特に優勝チームということを意識して入団を決めたわけじゃない。
強い環境に身を置いてみたいという一心だった。その時期の明治大学は大学選手権出場を(24年ぶりに)逃した年で、強さへの憧れを特に持っていたのかもしれない。

廣澤:そんな気持ちで入団した1年目のシーズンはどうでしたか?

土井:前半節はリザーブでの出場だったが、後半節は先発で、14試合出場した。
強いチームのイメージだったけど、その年のリーグは9敗して、10位だった。
だけど、そこから日本選手権で勝ち進み、結果としては、日本選手権ベスト4まで行った。
---補足---
開幕3連敗を喫し4試合目の九州電力戦でようやく勝利も6点差の辛勝、その後またも連敗からのラスト3試合を連勝し、ワイルドカードという日本選手権出場を決める順位決定戦に進めるギリギリの10位に滑り込んだ。その後ワイルドカードの2試合に勝利し、日本選手権出場を決め、リーグ2位のサントリーと引き分け抽選で勝利、その後、帝京大学を下し、その年の優勝チームである三洋電機ワイルドナイツ(現埼玉パナソニックワイルドナイツ)に負け、ベスト4でシーズンを終える。
 
廣澤:具体的にどんな気持ちで取り組んでいましたか?

土井:何も考えてない。ただ言われたことをやっていただけ。

廣澤:もう少し詳しく教えてもらえないですか笑

土井:本当に1年目は何も考えず、無心で自分の仕事を全うすることだけ考えていた。
ずっと東さん(現富士フィルムビジネスイノベーショングリーンエルクス コーチ)に付きっきりで練習を教えてもらった。
特にフィットネスでは後ろから押してもらって、励ましてもらって鼓舞してもらった。先輩に恩返しをする意味でも、出場する機会をもらった際は自分が出来る事を必死でやるだけだった。それしかなかった。

廣澤:自分の出来ることを理解して、最大限貢献することにフォーカスしたという事ですね。

土井:フィットネス、筋トレ、練習での動き方、自主練習、試合までの流れ、食事、体のケアなど、ラグビーに関する基礎のすべてを教わった。本当に感謝しています。

廣澤:ベスト4になった時はどんな気持ちでしたか?

土井:結局NECは強いと思っていたから、メンバーも凄かったし、むしろリーグ戦で全然勝てなくて、10位という結果の方が驚いた。大丈夫かなNECと。
ただ自分自身、今の強い御所実業、明治大学のような時代にいなくて弱かったから、そういった面ではベスト4なんだなって実感はあって嬉しかったのも覚えている。

意識の変化

廣澤:怪我が多いイメージでした。

土井:いや、多いっていうか、まあ怪我はするよ。コンスタントに怪我していただけよね笑

廣澤:(それを怪我が多いというのでは・・・)肉離れが多いってイメージです。

土井:いや俺は首の怪我で1年休んだけど、肉離れで1年とか休んだ事はなかった。

廣澤:(---土井の中では、1年休まない怪我はセーフという考えだった。。)
怪我を経て心境の変化はありましたか?

土井:怪我はコンスタントにしていたから、肉離れとか膝もやったことあるし、リハビリの大切さは怪我する毎に実感した。
当然それが大事だということは当たり前なんだけど。特に筋肉系の怪我は、予防という意味で怪我する前からリハビリをする事が大切だとわかってきて、今は練習前の準備も入念にしているし、弱いところを鍛えながら身体を連動できるようにトレーナーからメニューをもらって、体のバランスを整えている。

廣澤:意識が変わったということですね。

土井:はい。1番の変化は、新人の頃は練習開始15分前くらいに来ていたけど、今は2時間前とかにきて準備している笑
んー1時間、いや、やっぱり2時間前とかには来ておきたいよね。
試合以上に、練習への準備の時間も重要。

廣澤:様々な経験を経てNECも過渡期を迎え、移籍や引退で大量に選手がいなくなりましたね。

土井:正直、それもあんまり何も思わんかった。実際残ったメンバーは試合に出る機会が少なかっただけでもともと良い人材だと思っていた。移籍組にはNEC辞めんなよとかも思ったけど、1人の人生やし、その本人の選択であって、そこは俺が決められることじゃないから。
ただ、良いメンバーが居なくなったから弱くなったとかも言われたくないし、勝って結果は出さなきゃという気持ちだけはあった。

今と昔と

廣澤:強い時代とディビジョン2に落ちてしまった今の両方を知っている土井選手。
比較してギャップなど感じたりしますか?

土井:正直わからない。
みんな一生懸命練習に取り組んでいるし、実際何が違うのかわからない。
ストレングスの数値をみても強くなっていると思うし。

廣澤:何が足りないのでしょうか。

土井:入社当時のNECは仲ええけど、ラグビーになったらめっちゃやりあってたやん。
俺も若かったから、ケンカ腰でやってたし、先輩たちも良い意味で殺気立ってたというか、ラグビーでぶつかり合っている事が多くて、練習中もそれで激しくなる事が多かった。

廣澤:もっと喧嘩腰で来いよと。

土井:でも今、思ったらあんな激しくやった方が良いって言えない自分もいる。
きっと若手がケンカ腰にきても、その気持ちに100%応えられない。
だから言いづらくて少し迷っている。

廣澤:

土井:昔はってあまり言いたくないけど、昔はチーム同士で、良いか悪いかわからないが、本当にやりあっていた。
同じポジションの選手を怪我させてでも試合に出てやるという気持ちでノンメンバーはやっていたし、試合メンバーはそれにしっかり応えていた。

廣澤:熱量が足りないということでしょうか?

土井:単にそうは言いたくないけど、若い子たちはやっぱりもっと、出たいという気持ちを言葉にも態度でも表した方が良い。
外国人メンバーは自分の気持ちを表に出す選手は多いけど、日本人にそういった気持ちを持っている選手が多くないと強くなれない。
若い子らが出始めないと強くならんかなと思う。
フミ(田中史朗)さんがいつも言っているように、試合に出ている・出ていない関係なく発言して、ガツガツ出たいって気持ち出してやれば、もっと変わってくると思う。
ベテランは、気持ちは熱くても冷静にクレバーにこなす選手が多いし、そういったスタイルに変わっていく、そこにガツガツいってほしい。
けど俺はそれに応えられないかもしれないかも笑

廣澤:セットプレー、特にスクラムの部分ではどうですか?

土井:スクラムの時はちゃんと応えているな。絶対負けたくないからね。

廣澤:スクラムでのコミュニケーションについて昔と今とではどうですか?

土井:いまでもわからない笑
でも結局自分というか、自分で負けている感じ、最初のセットからバインド、ヒットまでで負けていたら後ろ(ロック)とか正直関係ない。押す重さとかだったら後ろに言うけど。

廣澤:それでも「ロックがこうしてくれたらもっと良くなるのに」とかは思わないですか?

土井:やりにくかったらちゃんとそれは言う。
ジェイク(ジェイク・ボール)とかめちゃくちゃ押してくれているし、それに「もっと押せ」とか言えない笑
ルーク(ルーク・ポーター)が最初に来た時は、変過ぎてそれは変えるように言って、今はめちゃくちゃ良くなった。山極(山極大貴)も良い。


あとは試合中、勝っていたとしてもスクラムで負けていたら、試合に負けている気持ちになる。1人では勝てない。8人で組まないと勝てない。そういう意識には変わった。
だからまずは後ろが最大に押せる環境を作るのが大事。

廣澤:その為に2時間の準備が必要なんですね。

土井:ケガの予防だけじゃなく、色んなプレーの為に準備が必要になってくるからね。

スクラムは強くあり続けたい

廣澤:今後の展望を教えてください。

土井:自分の強みはスクラムしかない。
それを若い選手が出られるように、教えてあげるというよりは、プレーが出来ている今だからできる伝え方をしていきたい。東さんにしてもらったように一緒に、基礎とスクラムの根幹の部分を。
そこを言葉でもプレーでも伝えていけたらと思う。
NEC自体はもちろんそうだけど、特にスクラムは強くあり続けてほしい。

インタビューを終えて

若手に殺気立ったプレーをして欲しい反面、その気持ちに応えられないという言葉を使った土井だが、まだまだ負けたくない気持ちを絶対に持っている。
特に同ポジションの後輩たちが躍起になってくることが一番土井を奮起させるはず。
同期としてはまだまだ押し返して欲しい気持ちはあるが、若手たちが土井を超えていくことで土井本人が望んでいるチームの形になっていく。9月からヘッドコーチも来日し、強度の高い練習が増え、気持ちがぶつかり合う瞬間がグリーンロケッツを形成していく。
まずはプレシーズンマッチ、内なる闘志ではなく気持ち剥き出しでプレーをする若手選手たちと土井 貴弘に注目してください。
 
土井貴弘選手プロフィール