グリーンロケッツ、ハーフタイムを挟んだ失点響いてシャイニングアークスに敗れる!
前節でクボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れた後、瀧澤直キャプテンは、このNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安戦に向けてのキーポイントをこう話した。
「悪い部分は試合のなかでブツ切りにして、いい部分を長く継続できるようにすること」
10日の第12節コベルコ神戸スティーラーズ戦から始まった、同じカンファレンスA所属チームとの総当たり戦第2ラウンド。NECグリーンロケッツ東葛は、これまでスティーラーズ戦、スピアーズ戦と連敗したものの、いずれも4トライ、5トライと相手防御を崩して得点を重ねている。
これが、瀧澤キャプテンの言う「いい部分」。
しかし、失点も多く、前節では41得点を挙げたものの71点を失った。
この失点をいかに少なくするかが、シャイニングアークス戦の肝(きも)だった。
ホストゲームでの初勝利を目撃すべく集まったクルーが鳴らす手拍子と拍手に送られて始まった試合は、最高の出だしを見せた。
SOフレッチャー・スミスが、相手陣22メートルラインを越えた辺りに蹴り込んだボールはシャイニングアークスのキャッチミスを誘い、こぼれたところにWTB杉本悠馬とLOジェイク・ボールが襲いかかる。
この圧力で反則を誘って、スミスのPGで先制した。
キックオフからペナルティを告げる笛が吹かれるまでに要した時間は、わずかに12秒。初勝利に懸けるグリーンロケッツの意気込みが一気に噴出したような、鮮やかな先制劇だった。
続くリスタートからの攻防でも、「いい部分」は、垣間見えた。
8フェイズにわたって反則をせずに防御を続け、シャイニングアークスのエース、FBイズラエル・フォラウにボールを持たせたものの、トライ寸前で逆サイドから戻ったWTB後藤輝也が倒してトライを防ぎ、ハンドリングエラーを誘う。
続くファーストスクラムでは、FWが奮起。反則を誘ってピンチを脱出する。
直後のラインアウトではミスが起こったが、防御で再びハンドリングエラーを誘い、スクラムで今度はフリーキックを獲得する。
それぞれが自分の役割を果たして、なんとか「悪い部分をブツ切り」にしようとしていたのだ。
しかし――続くラインアウトからの攻防では、勢いよく前に出て防御から圧力をかけるグリーンロケッツの防御ラインと、キックに備えて下がった最後尾との間にできたスペースに小さなキックを落とされ、そのままトライに結びつけられた。
ここで気持ちを切り替えて、「いい部分」を出すことに集中できれば、あるいはゲームの流れは変わっていたかもしれない。だが、続くリスタートからの攻防で相手を持ち上げるリフトタックルの反則をとられて自陣へと戻され、これが2つ目のトライを与える起点となってしまった。
攻防をベンチから見ていた瀧澤キャプテンは、こう振り返った。
「3対0になったら、次は3対7ではなく6対0にするべきだったし、したかった――というのが正直な気持ちでした。選手たちはみんな頑張っていましたが、小さなミスがあったりで、点数をとられてしまいました」
それでも、グリーンロケッツは前を向いて「いい部分」を積み重ねた。
18分にスミスのPGで8点差にすると、26分にはカウンターアタックから攻め込み、ゴール前でスクラムを得る。アタックの過程で一度はパスが乱れたが、HO川村慎の意を決した走りでゴール前に攻め込み、再びアタック。
最後は、FBレメキ・ロマノ・ラヴァが防御を引きつけてCTB松浦康一にパスを通し、松浦が嬉しいリーグワン初トライを挙げた。スミスのコンバージョンで13対14と迫る。
シャイニングアークスにトライを追加された後の36分には、松浦のHIA(脳しんとうチェック)の間にピッチに立ったCTB児玉健太郎が上手くスペースを作ってスミスを走らせ、最後はCTBギハマット・シバサキがトライに仕上げて、20対21と猛追する。
つまり、この時間帯までは、勝負の流れが行ったり来たりで、どちらにも決定的には傾いていなかった。
流れが大きく動いたのは、前半終了間際だった。
自陣22メートルライン付近で防御をしていたグリーンロケッツが、ラックでペナルティを犯す。
それまでの防御が機能していただけに、ここはペナルティをせずにハーフタイムに持ち込みたい場面だったが、シャイニングアークスは、PGではなくラインアウトからのアタックを選択。モール勝負に出た。
そして、41分。
モールを起点にトライを奪われて、20対28とスコアを離されてハーフタイムとなる。
チームを勝利に導くためにSHとして加入した田中史朗は、こう振り返った。
「今日は、ペナルティがなければ相手に前に出られることもなかったし、脅威となる部分もあまりなかった。ミスとペナルティで負けた印象です。試合中もずっとチームとしてペナルティを減らそう、自分の仕事に集中しようと言い続けてきたのですが、やっぱりペナルティが多くなって上手くゲームを運べなかった。これは、どのチームにも言えることですが、選手が自分1人で何とかしようという気持ちが強過ぎてペナルティを犯してしまうのです。本当にもったいなかった」
しかも、ハーフタイムが開けて最初のキックオフレシーブで、キックをキャッチしようとした選手を妨害したとして反則をとられてPGを決められ、その直後にもマイボールのラインアウトを確保できずに、トライを奪われた。
20対21と追い上げてから10分も経たないうちに17点を奪われて、自らを苦しい状況に追い込んでしまったのである。
ロバート・テイラーHC(ヘッドコーチ)が言う。
「前半に4トライを奪われ、リードを追いかける展開となったことで、流れをつかむことができませんでした。後半立ち上がりに、自分たちで防げる反則を犯してPGを決められたことに象徴されるように、選手たちが厳しいゲームを戦って勝つ経験をまだ持っていない部分も出た。ラグビーでは、80分間スイッチを切る時間はありません。勝つためには、集中を途切れさせてはいけないのですが、それがまだ定着していない。このリーグのレベルでは、ちょっとした判断のミスやプレー選択のミスは、たちまち得点という形で相手から罰を与えられます。新しいチームとして再出発したグリーンロケッツは、1年目のそうした厳しい教訓を学んでいるところなのです」
それでもグリーンロケッツは、53分にモールからFLアセリ・マシヴォウがトライを挙げて追撃。60分過ぎからは、スクラムで次々とペナルティを獲得してクルーからの拍手を浴びる。
終了直前の79分には、モールを押し込んで途中出場のHO佐藤耀がトライを挙げ、スミスの19本連続成功となるコンバージョンキックで34対38と逆転圏内に追い上げた。
トライを奪えば逆転勝利という状況で迎えた、続くリスタートからのラストアタックは、残念ながら実らなかったが、テイラーHCも「最後まで勝負を諦めず、スクラムで健闘して、ラストプレーを残して4点差にまで追い上げたことは評価できます」と称えた。
けれども、繰り返しになるが、追いかける点差が大きかったために、反撃が届かなかった。
68分には、スクラムを押し込んでペナルティを得たものの、続くラインアウトでミスが起こって「いい部分」を得点に結びつけられなかった。テイラーHCが「集中を途切れさせてはいけない」と指摘した、安定的に正確にプレーを続ける一貫性に欠けて、逆転劇へと場内のムードを高め、相手に重圧をかけ続けることができなかったのだ。
それが、未だに実戦での勝ち星なしという結果に終わった原因だった。
次節は、今季最後のホストゲーム。相手は埼玉パナソニックワイルドナイツだ(5月1日 柏の葉公園総合競技場 14時30分キックオフ)。
ワイルドナイツは、開幕節から2週続けて不戦敗となったが、その後は12連勝。DIVISION1のなかで唯一実戦での不敗を誇る強豪だ。しかも、トップリーグの時代の04年度に30対24と勝って以降、グリーンロケッツは勝ち星がない状態が続いている。
しかし、テイラーHCは、このゲームを「格好のチャレンジ」と位置づける。
「リーグのトップ4に残るチームと戦うためには、そのレベルに達するような準備をしなければなりません。そのプロセスが、チームをもっともっと向上させると思っています」
瀧澤キャプテンも、こう話す。
「次節は、まだ1回も勝ったことのないチームが1回も負けたことのないチームに勝つ、という“ビッグチャレンジ”をしたい」
LO山極大貴も、「大物食いをして、勝利が大ニュースになる――そういう絵を描いて、全力で臨みます」と、意欲を燃やす。
果たしてホストスタジアムでのラストゲームで、グリーンロケッツはビッグチャレンジを良い結果に結びつけられるのか――これまで熱烈な応援で後押しを続けてくれたクルーへの感謝を表すためにも、果敢なパフォーマンスが求められる!
スターティングメンバーなどはこちらよりご覧ください。
リーダーズコメント
ロバート・テイラーHC
今日の試合は、前半に4トライを奪われ、リードを追いかける展開となったことで、流れをつかむことができませんでした。選手たちが最後まで勝負を諦めず、スクラムでも健闘して、ラストプレーを残して4点差にまで追い上げたことは評価できますが、常に点差を追う展開だったことが、最後の最後まで影響を及ぼしました。
後半立ち上がりに、自分たちで防げる反則を犯してPGを決められたことに象徴されるように、選手たちが厳しいゲームを戦って勝つ経験をまだ持っていない部分も出た。ラグビーでは、80分間スイッチを切る時間はありません。勝つためには、集中を途切れさせてはいけないのですが、それがまだ定着していない。
プロフェッショナルのラグビー選手であるためには、何もスーパースターである必要はありません。ただ、80分間を一貫して集中し続けることが求められる。その点で、チームにはまだ一貫していいプレーを継続する集中力が欠けています。たとえば、良いスクラムを組んでペナルティを獲得したのに、続くラインアウトでミスをしてしまう――これが、私が言う一貫性のなさです。
このリーグのレベルでは、ちょっとした判断のミスやプレー選択のミスは、たちまち得点という形で相手から罰を与えられます。新しいチームとして再出発したグリーンロケッツは、1年目のそうした厳しい教訓を学んでいるところなのです。
チームには、直近の3試合で非常に良くなった部分もあります。上位のチームからもトライが獲れているし、セットスクラムも向上している。残るは2試合ですが、埼玉パナソニックワイルドナイツと横浜キヤノンイーグルスという、レベルの高いチームと戦うことができます。
この2試合は私たちにとって格好のチャレンジです。リーグのトップ4に残るチームと戦うためには、そのレベルに達するような準備をしなければなりません。その過程で、チームをもっともっと向上させることができると思っています。
ワイルドナイツ戦では、スクラム、ラインアウト、モールといった部分でいかに戦うか、セットプレーが重要になります。また、相手のどこにキックを蹴り込み、相手のキックにどう対処するかという、キッキングゲームが非常に上手いので、それにも対応しなければなりません。バックスでは、彼らの力強いCTBを止めることがキーになる。当然、しっかり対策を立てて臨みますが、同時にそのための準備が、さらにチームのレベルを上げることにつながると確信しています。
松尾健バックスコーチ
試合を振り返れば、最近はペナルティの数が減ってきましたが、肝心なところでのペナルティがまだ多い。ここで反則をしたら痛いな、というところで、けっこう不用意なペナルティが目につきました。やはり、自分たちでコントロールすれば防げる反則は減らさなければならない。
もちろん、選手たちは試合のなかで興奮しているから、つい反則してしまうのでしょうが、でも、それをコントロールしないと、いい流れを持続させられない。
ハーフタイムの前後に失点することが多いところも、まだ修正されていないですね。
時間を考えながらどういうプレーを選択するのか、もう少し意思を統一する必要があるでしょう。練習でやっていることができていない場面や、練習でやっていないプレーを選択した場面もあって、もう一度意思統一を図る必要があると思います。
でも、チームの状態はかなり良くなってきています。
今日もスクラムでペナルティをとっていたし、あとはラインアウトの精度を上げることですね。
もう少しデリバリー(ラインアウトからの球出し)にこだわって、質の高いボールをバックスに供給しないと、アタックがプレッシャーを受けてしまうので、そこは修正が必要です。
トライを獲ったあとのリスタートでミスをすることも、シーズンを通しての課題ですね。
今日も、スコアを追い上げたところで失点して、終始リードを許していた。たとえば、一度同点に追いついたり、逆転すれば、相手ももっとプレッシャーを受けるのでしょうが、そういうところで得点を連続させることができていない。それが、最後に逆転できなかった要因だと思います。
瀧澤直キャプテン
今日は、前半から点数的には負けていましたが、自分たちがやりたいように、プラン通りにできていた部分があったので手応えがありました。それだけに、プラン通りにできなかった部分で点をとれなかったのが悔しいですね。
3対0になった部分は非常に良かったのに、そのいい部分を続けられずに悪い部分が出た。3対0になったら、次は3対7になるのではなく、6対0にするべきだったし、したかった――というのが正直な気持ちでした。選手たちはみんな頑張っていましたが、小さなミスがあったりで、点数をとられたのかなと思っていました。
勝つためには、いいことの回数を増やして、悪いことを減らして行くしかない。今は、1人ひとりがやるべきことを果たして、いい循環に持って行くくらいしか具体的な方法を考えられませんが、そう思います。
今日は、僕自身はタックルミスをしてしまったのですが、この1週間、ディフェンスの強化に取り組んで、前節からの変化を出せた選手もいました。そういう意味では、歴然と良くなったわけではないのですが、小さなステップは踏めたと思います。
スクラムに関して言えば、ペナルティを1つとられましたが、いい部分の方が多かったですね。試合の内容にも良い影響を与えられたと思います。まあ、だからこそ結果がついてこなかったことで、フラストレーションが溜まるというか、悔しさが残るのですが……。
でも、僕自身は、シャイニングアークスのスクラムはかなり強いと思っていたので、ワイルドナイツ戦に向けていい手応えになったと思います。それを生かして、次節は、まだ1回も勝ったことのないチームが1回も負けたことのないチームに勝つ、という“ビッグチャレンジ”をしたいですね。
プレーヤーズコメント
昨季までチームメイトだったシャイニングアークスLOサム・ジェフリーズと“バトル”を繰り広げたLO山極大貴
彼とは、グリーンロケッツでずっとコンビを組んでいたので、ムチャクチャ意識しました。やっぱり、彼のプレーは激しかった。でも、この1年間で、少しは彼に近づけたようにも感じました。
今日が大事な試合であることがわかっていたので、僕自身、気持ちは入っていました。でも、後半の立ち上がりに、ラインアウトで(川村)慎さんがメッチャいいボールを放ってくれたのに、僕がキャッチをミスして相手ボールになり、トライを奪われたのは痛かったですね。他のプレーも含めて、もう一度映像を見て修正をします。
残り2試合は、順位が上位のチーム。この上は、大物食いをして勝利が大ニュースになる――そういう絵を描いて、全力で臨みます。
勝利を目指してチームメイトにずっと声をかけ続けたSH田中史朗
今日は、ペナルティがなければ相手に前に出られることもなかったし、脅威となる部分もあまりなかった。ミスとペナルティで負けた印象です。
試合中もずっとチームとしてペナルティを減らそう、自分の仕事に集中しようと言い続けてきたのですが、やっぱりペナルティが多くなって上手くゲームを運べなかった。
これは、どのチームにも言えることですが、選手が自分1人で何とかしようという気持ちが強過ぎてペナルティを犯してしまうのです。本当にもったいなかったですね。
(相手のエース)イズラエル・フォラウになるべくボールを持たさないようにするゲームプランでしたが、ボールを持たれても、前半はしっかりと止めている時間帯がありました。その辺りの時間帯は良かったのですが、突破されて相手に勢いがついたときに、ゴール前でペナルティを犯して、それを得点に結びつけられた。そういう場面が多かったので、やっぱり、まずはペナルティをなくすことですね。
これからは、トライを獲ることも大事ですが、相手に獲られなければ負けることはない。こちらが得点できなくても、相手を無得点に抑えれば負けはない。だから、もっとコミュニケーションをとってディフェンスができるよう、しっかり練習したいと思います。
フレッチャー・スミスとは、ニュージーランドのハイランダーズでもいっしょにプレーしていたので、今は2人でゲームを作っていく感覚でいます。その辺は、とてもやりやすいですね。
これからの2試合はどちらも古巣との対戦になりますが、まずはしっかりと相手を分析して止めること。そうすれば、スミスのキックもいいので3点ずつ積み重ねて、僅差でも勝てるようにしたいですね。
今季これまで21本中20本成功(内19回連続成功)のSOフレッチャー・スミス
シャイニングアークスという“古巣”のチームと対戦できたことは、とても良いチャレンジでした。かつてのチームメイトがどういうプレーをしてくるのかもわかっていたし、それに対処もできたと思います。試合後に、言葉を交わしたことも含めて、良かったですね。
キックがずっと決まっていることはラッキーなことだと思っています。キックが決まれば、チームも楽になりますから。ただ、成功させようと意識し過ぎるのは良くないので、あまり考え過ぎずに、自分のルーティンに沿って蹴ることを心がけています。ニュージーランドにいた頃に17回連続で成功させたことはありますが、19回連続は自己ベストです。
でも、あまり意識させないでください。次は考え過ぎて外してしまうかもしれないから(笑)。
ただ、僕は、プロフェッショナルとしてもう9年近くプレーしているので、試合の状況によっては少し緊張する場面もありますが、そういう場面にも上手く対処できると思います。
チームが勝つためには、もう少し正確にプレーすること。
たとえば、スクラムで相手の反則を誘ってゴール前のラインアウトに持ち込みながら、そこでミスをした場面がありましたが、そういうふうに良い場面と悪い場面が交互に現れるようでは勝つのが難しい。だから、1つひとつの瞬間を大切に、正確にプレーすることで、良い場面を積み上げていくようにすることが、勝つためには求められていると思います。
(取材・文:永田洋光)
ホストゲームイベントの様子