NEC GREEN ROCKETS
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5/20(金) DIVISION1/2 入替戦 第1戦 vs 三重ホンダヒート マッチレポート

試合情報

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グリーンロケッツ、ボーナスポイント付きの勝利で入替戦突破に大きく前進!

 
DIVISION1残留を懸けた三重ホンダヒートとの入替戦は、27日に東大阪市花園ラグビー場で行われる第2戦(19時キックオフ)も含めた2試合で決着がつく。
問われるのは、2試合合計の勝ち点だ。
合計ポイントが多かったチームが、来季をDIVISION1で戦うことになる。だから、20日の初戦に33対10と勝利を収めたNECグリーンロケッツ東葛が、そのまま残留という結果を手にしたわけではない。
「今日のロッカールームは、これまでで一番いい雰囲気だった。来週はさらにいい雰囲気で終わりたい」
そう言ったのは、立ち上がりの4分に相手ボールのラインアウトをスチールして勝利に至る流れを作ったLOジェイク・ボールだ。
ウェールズ代表として50キャップを誇る百戦錬磨のベテランは、「ラグビーは気持ちが大きくモノを言うスポーツ」と噛みしめるようにつぶやいて、こう続けた。
「だからこそ、勝ちたいという強い気持ちを持ち続けること。それが来週に向けての、もっとも大切なことになる」
ゲームキャプテンとして、20年まで在籍した“古巣”と80分間戦い続けたCTBレメキ・ロマノ・ラヴァも、こう話す。
「今日勝ったからといって、仕事はまだ半分しか終わっていない。確かに勝って気持ちはいいけど、ヒートは来週、絶対に違うチームになって、アタッキングラグビーでどこからでも攻めてくる。軽い気持ちで第2戦に臨むとやられてしまう。気を引き締めないと」
チームの誰もが、今季初めて挙げた勝利にホッと胸をなで下ろしながらも、最終的な結果が決まる第2戦を見据えていた。 
NTTジャパンラグビーリーグワン2022をDIVISION1で戦ったチームのプライドにかけても、連勝で入替戦をパーフェクトな形で突破する――そんな決意がみなぎっていたのだ。
 

19時開始の今季初めてのナイトゲーム。
キックオフを受けたグリーンロケッツは、今季積み重ねてきたラグビーの集大成を披露しようと、ノーホイッスルトライを目指して猛然と攻める。
SOフレッチャー・スミスのハイパントを相手が落とすと、すかさず拾って右へ展開。WTB後藤輝也とNO8ジョージ・リサレがクロスして前に出る。さらにフェイズを重ねて左サイドでオーバーラップを作り出し、CTBレメキ・ロマノ・ラヴァが、走り込んできたFB金井大雪にパス――というところでボールがヒートの選手の手に当たる。
これが意図的にボールをはたき落としたと判定されて、ペナルティが与えられた。
この間84秒。
 1つひとつのランやラインブレイクに、秩父宮ラグビー場に詰めかけたクルーは、思わず「おお!」というどよめきを何度も漏らした。合計8フェイズに及ぶ見事な連続攻撃で表明した、グリーンロケッツの勝利への意欲を強く感じ取ったからだった。
ところが、与えられたペナルティを蹴り出してゴール前のラインアウトにしようともくろんだスミスのキックが、少し飛び過ぎてタッチインゴールを割ってスクラムに。さらにスクラムでもペナルティを取られて、いい流れが途絶えた。
そこで相手ボールを奪ったのがジェイクのスチールであり、さらに続くヒートの攻勢を止めたのが、FLアセリ・マシヴォウのジャッカルだった。

レギュラーシーズン終盤から、いい時間帯を長く、悪い時間帯を短くすることに取り組んできた成果が、入替戦という土壇場で現れたのだ。
ここからグリーンロケッツの「いい時間帯」が始まった。
まずは得意とするアンストラクチャーな状況からのカウンターアタックだ。
ヒートが蹴り込んだボールを自陣に戻って捕球したスミスが、自ら走ってチャンスを広げ、LO山極大貴にパス。ラックの左側でボールを受けたレメキは、そのまま左に攻めるのではなく、大きなスペースが広がる右へパスを放ってアタックの方向を変える。
パスを受けたCTB松浦康一は、冷静に右のFLフェトゥカモカモ・ダグラスに。ダグラスも右に控える後藤にボールを託す。
後藤が走り出したのは、まだ自陣10メートルライン付近だったが、すぐに加速。大きく前進して前方にボールを蹴り込む。そして、地面に弾んだボールを確保するや、勢いのままインゴールへとダイブ。鮮やかなトライに仕上げた。
開始から6分54秒の鮮やかな先制劇だった。
 

いい時間帯は、さらに続く。
14分には、ゴール前のラインアウトを起点にFWが連続的にアタック。リサレからパスを受けたアセリがトライを追加する。


25回連続成功を目指したスミスのコンバージョンは、ポストに弾かれて失敗に終わったが、これで12対0だ。
ヒートにPGを返されたものの、37分にはペナルティトライを得て19対3とリードを広げた。
ロバート・テイラーHCは、ペナルティトライに至ったアタックのプロセスを、この試合の「良かったポイント」に挙げた。
後藤のカウンターアタックを起点に、ラックから出たボールをスミスが巧みにさばいて攻撃を継続。さらに自ら防御のギャップを縫って抜け出し、アセリにつなぐ。これでゴール前へと攻め込み、そこからFWがしつこくサイドをえぐって最後はヒートの反則を引き出した。そこに、ボールを大きく動かし、スペースに走り込んで相手防御を打ち破る「今季積み重ねてきたこと」が集約されていたからだ。



 さらに、前半終了間際にも、ゴール前で得たラインアウトから「トライを獲り切るぞ!」と声を掛け合い、モールを押し込んでリサレがトライを挙げた。
これで26対3。トライ数も4対0として、5ポイントの勝利に向けて大きく前進した。


ところが――。
後半は、一転して我慢の時間帯が続いた。
きっかけは、立ち上がりにいい形で相手陣22メートルラインまで攻め込みながら、ラインアウトからモールを組んだ瞬間にとられたペナルティだった。
そこから10分間、ゴールラインを背負っての防御が続く。
けれども、DIVISION1で何度も苦い思いを重ねた経験が、選手たちを踏ん張らせた。
時計が47分にさしかかる辺りで、グリーンロケッツの誰かが叫んだ。
「この時間帯や!」
そうやってお互いに声を掛け合い、集中力を保ち続けたのだ。


ゲームキャプテンのレメキが振り返る。
「今、みんな(試合で)メッチャ頑張っているよ。今日も、これまでの試合と同じように後半の10分で流れが変わりかけたけど、でも前半の流れが良かったから、みんなが頑張った。だから、絶対に勝てると思っていた」
50分にスクラムを押し込んでペナルティを獲得すると流れが変わり、そこからグリーンロケッツの時間帯が始まった。


勝負を決めるトライが生まれたのは、そこから10分ほど経過した61分だった。
ハーフウェイライン付近のラインアウトを獲得して左へ展開。
スミスが左端で待つWTB杉本悠馬にキックパスを通し、途中出場のFBトム・マーシャルが大きくゲイン。ラックに持ち込んで今度は右へと展開し、松浦の飛ばしたパスを受けた後藤が抜け出して、最後はサポートしたアセリがトライに仕上げた。
右タッチライン際からの難しいコンバージョンをスミスが決めて、33対3。
あとは、第2戦に向けて、さらに得点を重ねて残留をより確実にするだけだった。
 


しかし、前半からハイペースでゲームを進めてきた反動が出たのか、ペナルティが増えて、攻め込んでは自陣に戻される展開に。67分にはヒートに一瞬の隙をつかれてトライを許し、33対10と点差を詰められた。
この試合で巧みなパスさばきを見せて、プレーヤ-・オブ・ザ・マッチに選ばれたSH田中史朗が振り返る。
「後半はちょっとミスが多かったですし、相手を1トライに抑えたことは良かったのですが、もしノートライに抑えることができれば、次の試合に向けてヒートにも、もっとプレッシャーをかけられた。それがちょっと悔しかった」
結局、試合はそのままのスコアでグリーンロケッツの勝利に終わったが、誰もが第2戦を見据えて気を緩めてはいない。


テイラーHCも、「後がないヒートは大量得点を挙げての勝利を狙ってくるでしょう。当然、ディフェンスが重要になる」と話した上で、第2戦をこう位置づける。
「レギュラーシーズンの終盤に、上位チームと連戦するなかで、チームは少しずつ向上してきました。その積み重ねが今日の勝利につながっている。だからこそ、来週は、さらにいいゲームをしてシーズンを締めくくりたい。ベストのゲームをして勝つことが、今季を最高の形で締めくくることになるし、それがまた来季への最良のスタートとなるのです」

DIVISION1で戦う未来に向けて、グリーンロケッツは、シーズン最終戦をさらなる鮮やかな勝利で終えるために、今季最後のハードワークに励む。



スターティングメンバーなどはこちらよりご覧ください。

リーダーズコメント

バート・テイラーHC

今日の良かったところを挙げれば、まず前半にFWでしつこく攻めてペナルティトライを獲れたこと。それから、後半にスペースを広く使ってアセリが挙げたトライです。グリーンロケッツにとっては、今までやってきたラグビーに自信を持てるようなトライでしたし、その後でヒートにトライを獲られましたが、彼らの自信を打ち砕く効果がありました。
一方で後半は、ラインアウトのミスがなければもっとトライを獲るチャンスがありました。
チームとしてセットプレーを武器にしている以上、スクラム、モール、ラインアウトは、来週に向けてもっと向上させる必要があります。
今日の勝利は勝利として、来週は、後がないヒートが当然、大量得点を挙げての勝利を狙ってくる。だから、ディフェンスも重要になります。
そういう試合の流れを予想すれば、チャンスを確実にモノにして得点することも大切で、つまり来週は、セットプレー、ディフェンス、アタックの正確さがカギになる。これまでと同じように、いかに今まで積み重ねてきたことを正確かつ組織的に遂行するかに勝利はかかっているのです。
だからこそ、選手たちには、冷静になってスマートにプレーして欲しい――そう思います。
選手たちが今日の勝利を祝うことは大切なことだし、当然のことでしょう。レギュラーシーズンの終盤に上位チームと連戦するなかで、チームは少しずつ向上してきました。その積み重ねが今日の勝利につながっているのですから。
でも、単純に喜ぶだけではなく、喜びのなかから「オレたちはできるんだ」という自信をつかみ取って欲しい。
グリーンロケッツには、まだまだやるべきことがたくさんあります。
勝利が運んでくれたエナジーと自信を糧に、選手たちも来週の試合に向けて集中するでしょう。
トレーニングも、先週よりハードになるでしょう。
来週は、ベストのゲームをして勝つこと――それが、今季を最高の形で締めくくることにつながるし、同時に来季への最良のスタートとなるからです。
 
 
瀧澤直キャプテン

今日勝ったことは自信につながりますが、まだ1試合残っているし、自分自身のプレーの反省もあって、手放しで喜ぶ気持ちにはなれないというのが、率直な気持ちです。
ただ、チームにとっては、「オレたちは勝てるんだ」と、自信になる試合でした。
今日は、入替戦だからとヘンに気負うのではなく、前半に出たリーダー陣が押さえるところは押さえて、プラン通りにゲームを遂行できたのではないかと思います。
後半は、トライを獲り逃した部分もありましたし、トライをもう少し積み重ねることができれば……という部分もありました。そういう詰めの甘さがあったから、今季は入替戦に回ることになったのですが、そのなかでも自分たちの力を出し切って、プレッシャーがあるなか、勝たなければならない試合に勝ったのは本当に大きいことだと思います。
来週は、入替戦の2戦目であると同時に今季最後の試合なので、今日の内容からまた悪かった部分を反省して臨みたい。
試合が終わった後に、みんなで「今季の反省点を修正できたね」、「来季につながるね」と話せるような、今季の一番いいゲームにしたいですね。
 

レメキ・ロマノ・ラヴァ ゲームキャプテン

入替戦の相手が(20年まで在籍した)ヒートに決まってから、どうしても今日の試合に出たかった。だから、試合に出られることになって、本当に嬉しかったです(注・第14節のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安戦後に、危険なタックルがあったとして出場停止処分になっていたが、ヒアリングとワールドラグビーの講習を受けて復帰)。
今、みんな(試合で)メッチャ頑張っているよ。
今日も、これまでと同じように後半の10分で流れが変わりかけたけど、でも前半の流れが良かったから、みんなが頑張った。だから、絶対に勝てると思っていました。
でも、今日勝ったからといって、仕事はまだ半分しか終わっていない。
確かに今日は勝って気持ちがいいけど、ヒートは来週、絶対に違うチームになって、アタッキングラグビーでどこからでも攻めてくる。軽い気持ちで第2戦に臨むとやられてしまうよ。だから、気を引き締めないと。
来週も勝って、こういうインタビューを受けたいですね。そうしたら、最高の(シーズンの)終わり方になると思っています。

プレーヤーズコメント

ラインアウトに、フィールドプレーに、と大活躍したLOジェイク・ボール

今季は、この秩父宮のリコーブラックラムズ東京戦(第8節)で本当に悔しい思いをしました。
最後にトライを獲って勝ったと確信していたのに、TMOで逆に僕のペナルティとなってしまった。あの負けで、シーズンの流れが変わってしまったと言えるかもしれません。でも、それから今日まで、チームは強い相手と競った試合を経験し、だいぶ力をつけてきました。
特にスクラムが良くなったし、ラインアウトも、モールでトライを獲れるようになってきた。そうした部分を武器にして、チームは成長してきたのです。
さらに言えば、どんな相手からも得点を獲れるようになってきた。これも大きな進歩です。
今日のロッカールームは、これまでで一番いい雰囲気でした。だからこそ、来週はさらにいい雰囲気で終わりたい。
第2戦に向けて大切なのは、そういうメンタルをしっかり保つことです。
ラグビーは気持ちが大きくモノを言うスポーツ。
「勝ちたい」という強い気持ちを持ち続けることが、なによりも大切なのです。

今季、チームで初めてプレーヤー・オブ・ザ・マッチを受賞したSH田中史朗

なんで僕がプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたのかわからないのですが、今日は負けられない戦いだったので、チームとしていい状態でまとまれました。リーダー陣の1人としても、みんなでチームをまとめながらプレーできたので良かったと思います。
アタックでは今、相手を分析してスペースにボールを動かそうとしているのですが、そのなかでSOフレッチャー・スミスがしっかり判断してボールを放してくれます。そのパスに、CTB陣やWTB、FBが的確にスペースに走り込んでくれる。
今日も、FB金井大雪が積極的にスペースに走り込んで、ゲインラインをすごく切ってくれたので、ラグビーらしいラグビーができました。
後半はちょっとミスが多かったですし、もう少し点数も獲れたと思います。相手を1トライに抑えたことは良かったのですが、もしノートライに抑えることができれば、次の試合に向けてヒートにも、もっとプレッシャーをかけられた。それがちょっと悔しかったですね。
でも、試合の終盤に一瞬、(集中力が)切れた部分はあったのですが、持ち直して相手を1トライに抑えられところは、すごく良かったと思います。
 
62分からの途中出場で初キャップを獲得。いきなり最初のプレーでジャッカルを決めたFL大澤蓮

今日は、メチャクチャ楽しかったです。
メンバーに選ばれたときは、入替戦という大事な試合なので、かなり緊張してプレッシャーがありました。でも、前半は、そんなプレッシャーまで吹き飛ばしてくれるようないい展開だったので、ベンチに座りながら「早く出たい、早く出たい」みたいな感覚でいました。「早くオレを使え!」みたいな気持ちでしたね(笑)。
だから、あまり緊張することもなく、ピッチに入ったら思い切りプレーしようと思っていたのですが、最初のプレーでジャッカルが決まってメチャクチャ嬉しかった。みんなも祝福してくれたし、出場時間は20分くらいでしたが、本当にいいチームだな、と思いました。


 (取材・文:永田洋光)