NEC GREEN ROCKETS
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入替戦第2戦 5/13(土) vs 三重ホンダヒート リーダーズコメント

試合情報

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入替戦に敗れて来季はD2から「再生」を目指す!
~来季こそ、スタンドに湧き上がったエールに応えるシーズンに~
 
ホストスタジアムの柏の葉公園総合競技場に集まったクルーに向けて、シーズン締めくくりの挨拶をするNECグリーンロケッツ東葛キャプテン、レメキ ロマノラヴァの大きな瞳は、涙でかすんでいた。


「クルーのみなさん、ホントにすいませんでした!力が足りなかった。本当にごめんなさい」
スピーチは、大半がクルーへの謝罪に費やされた。
そして、次の瞬間に訪れた沈黙を埋めるように、クルーの誰からともなく1つのフレーズが発せられ、それがスタジアム全体に伝播して大きな響きとなった。
「GO ROCKETS GO!」
「GO ROCKETS GO!」
「GO ROCKETS GO!」
響き渡るエール以外の物音が、スタジアムから消えた。
雨雲を突き破るように響くエールは、2022―23年度のシーズン全日程を終えてディビジョン1からの降格が決まったチームを励ますように、そしてねぎらうように、いつまでも続いていた。



「昨季よりもずっと良いチームになって3勝したにもかかわらず、最後に最悪の結果となってしまった……。今はスタッフも選手も、全員が非常に落ち込んでいます。本当に残念な結果になってしまいました……」
そう語るロバート・テイラーHC(ヘッドコーチ)の目は赤く、涙の跡がくっきりと残っていた。
物音1つ聞こえてこないロッカールームの静けさが、負けた衝撃の大きさを物語る。
2003年にジャパンラグビートップリーグの発足メンバーとなって以来、入替戦に回った経験はあるものの、新しいフォーマットのジャパンラグビーリーグワン2季目となった今季まで、20シーズンにわたってグリーンロケッツ東葛は、日本ラグビー最高峰のコンペティションでずっとしのぎを削ってきた。
そんな歴史が一度途切れて、来季からはディビジョン2で再生へのリスタートが始まる。
しかし、そう頭を切り換えられるようになるまでには、まだ時間が必要なのだろう。
ロッカールームの重たい沈黙は、前週の第1戦に29対34と敗れて以来、それでもホストゲームで6点差をつけて勝てば残留が決まると信じて戦ってきた戦士たちが、逆転できなかった悔しさにうちひしがれている様子を、何よりも雄弁に物語っていた。
 
「今日の試合に関していえば……」
テイラーHCが重い口を開いた。
「80分という時間をかけて6点差をつけて勝てばいいだけの試合なのに、立ち上がりから切羽詰まったような戦い方になっていました。第1戦での5点差が重くのしかかって、そういう戦い方になったのだと思います。焦りも、あったのかもしれません。それでも最後にはトライを獲ってくれると信じていたのですが……三重ホンダヒートが最後まで諦めずにタックルし続けて、グリーンロケッツ東葛はトライを奪うことができなかった……」
入替戦は、2試合の合計得点で結果が決まる。
だから、前週の5点差負けを上回る6点差の勝利を挙げれば残留が確定する。
6点といえばPG2本分の得点。それだけの差の勝利を80分間かけて達成すればいいのが第2戦なのだ。
しかし、ピッチからは焦りのようなものが伝わってきた。
早くトライを挙げたい。
早く6点差をつけて主導権を握りたい。
そんな気持ちが、アタックの結末を、トライではない方向へと導いた。
開始直後1分過ぎのアタックでノット・リリース・ザ・ボールの反則をとられたのを皮切りに、16分にはゴールラインを目の前にしたWTB後藤輝也がタックルを受けながらトライを決めようとして同じ反則をとられ、21分にはヒート陣内でゴールポスト正面の好位置でペナルティをもらいながらPGを狙わず、ラインアウトからトライを狙いにいって、オブストラクションの反則をとられた。
前半終了間際には、ヒート陣でペナルティを得るやキャプテンが自ら速攻を仕掛けたが、これもトライには結びつかずに終わっている。
「もちろん、背景には、今季はPGの成功率が低く、PGを決めた数が非常に少なかったことがあります。PGを狙うのか、ラインアウトからトライを獲りに行くのかの判断まで含めて、今季は毎週、リーダーグループでゲームの進め方を話し合ってきましたが、最後まで選手たちはPGを選択することに確信が持てず、トライにこだわったのでしょう」
それも、第1戦で5点差をつけられて「追う立場」に立たされたグリーンロケッツ東葛に現れた焦りの兆候だと、テイラーHCは分析するのだ。


「ゲームコントロールの細かい部分を、もっとうるさく選手たちに伝えるべきでした」
そう唇を噛みしめたのは、松尾健コーチだ。
「今日も、後半は風上に立っているからエリアをとっていけばいいのに、レメキのトライとコンバージョンで1点差に迫った直後のリスタートを、自陣から攻めてミスしています。シーズンを通して何度か見られた場面ですが、どういう状況のときにどうすべきなのか。選手の判断を尊重するだけではなく、コーチサイドからも、もっと細かく伝えていくべきだった――今はそう反省しています」
トップリーグ時代に背番号10を背負い、厳しい勝負のなかでゲームを組み立ててきたOBコーチも、やはり選手たちのプレーぶりから焦りのようなものを感じ取っていたのだ。
だから、こう続けた。
「外国人選手たちを筆頭に、グリーンロケッツ東葛の選手たちはみな、トップレベルであるが故に、自分がやらなければならないという気持ちが強い。今日の試合で言えば、レメキも(マリティノ・)ネマニも、周りの選手の分まで自分でやろうとするようなところがありました。もう少し周りの選手を使えば、もっとチャンスを作れたかもしれない。彼らの責任感の強さが裏目に出て、パニックになったような印象がありました」
責任感が強く、能力の高い選手たちを、チームという有機体のなかでどう活かし、また彼らが他の選手たちを活かすことで、さらにチームとしての動きを活性化する――そんなプロセスへと持って行けなかったところに、コーチングスタッフとして責任を感じているのだ。
 

権丈太郎コーチは、ハーフタイムでの指示をもっと強く明確にすべきだったと振り返った。
「今日のハーフタイムの時点でスコアは0対10。第1戦と合わせると15点のビハインドになりますが、セットプレーも勝っているし、後半は風上になる。だから、落ち着いて相手陣でゲームを進めればいい。ハーフタイムにはそう伝えたのですが、それでも少しパニックになったのかもしれない。もっともっと強く言うべきだったと反省しています。
入替戦の2試合を振り返れば、あそこでこうしていれば……という「たら・れば」がいくつもありますが、それは戦術やゲームの運び方を、コーチとしてきちんと落とし込めなかった――ということになるのかもしれません。選手に判断を委ねるところと、こちらがちゃんと手綱を持っていなければならないところが、少し曖昧だったと反省しています……」
つまり、勝てる力を十分に持ちながら、そして、勝てるチャンスをたぐり寄せながら、細かいところで勝利に至るプロセスに綻びが生じた――というのが、入替戦2試合だったのである。
 

そうした細かい部分をチーム全員に徹底して、グリーンロケッツ東葛が、新しい姿でディビジョン1に返り咲くためには何が必要なのか。
敗れたばかりの時点ではまだ明確には答えが見つからないかもしれないが、松尾コーチは来季に向けてこう言った。
「来季は、もう一度、いちからチーム作りをやり直していかないといけないですね。
まずは、どういうキャラクターの選手がいて、どういうラグビースタイルがチームに合うか、ということをコーチングサイドでしっかりと固めるシーズンにしたい。我々のキャラクターをしっかり見極めて、どういうラグビーがみんなのパフォーマンスを最大限に出せるのか。そういう戦い方を、しっかり作っていくことが大切だと思います。そんなプロセスを通じて、最終的には選手1人ひとりがラグビー理解を、さらに深めていく方向にしたいですね」


確かにディビジョン2からの再昇格を目指す来季は、これまで連戦が続くなかで見失いがちだった「自分たちのラグビー」の細かな部分を、じっくりと見つめ直すいい機会だと、とらえることができる。そうやって、真の「勝つための文化」をチームに根づかせなければ、たとえ1シーズンで昇格を果たしても、すぐにまた入替戦に回るような事態になりかねないからだ。
そうではなく、再昇格を果たすと同時に次のシーズンには上位争いに食い込めるような実力を蓄えるための、充実した強化の時間にするために――そして、柏の葉スタジアムのスタンドで「GO ROCKETS GO!」のエールを送って今季の戦いをねぎらってくれたクールの熱い期待に応えるためにも――来季こそ、新たなグリーンロケッツ東葛の再建が果たされなければならないのだ。
ロッカールームに漂った重たい沈黙は、メンバーそれぞれが再生への思いを噛みしめるための、「最初の一歩」だったのかもしれない。
(取材・文:永田洋光) 

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